W-ANS ACADEMY「国際女性デー」オンラインイベント(主催:株式会社Creative2)が、2025年3月9日(日)に開催されました。本イベントは、世界を舞台に活躍するアスリートをお招きし、「月経とコンディショニング」や「食事と体重管理」など、女性アスリートならではの悩みや体験などをお話しいただくと同時に、視聴者の健康管理や競技力向上に役立てていただくことを目的に行っています。
Food Connectionでは、2024年パリオリンピックの柔道女子48kg級で金メダルを獲得し、2025年2月のグランドスラムバクー大会にて見事優勝された角田夏美選手とご一緒に、「食事と体重管理」について意見交換をさせていただきました。
減量中の食事と水分補給 ―計量前と計量後―
柔道やボクシングのような体重階級制の競技では、体重によって出場する階級が分かれるため、選択した階級に合わせて減量や増量をするアスリートが少なくありません。また、計量後に体重やコンディションが回復できれば、減量前の体重が重い方が有利に戦えることから、できるだけ大きい幅で急速に減量を行う選手が少なくないのが現状です。
2019年に52kg級から48kg級へ階級を変更した角田夏美選手も、大会の1ケ月前ぐらいから食事制限をしつつ有酸素運動を増やし、徐々に体重を落とすそうです。更に、大会の1週間くらい前から水分調整を行い、目標とする体重まで減量をします。
減量中は、活動量の多い昼間にエネルギー源となるご飯やうどん、そばなどを食べ、トレーニングや練習後の食事では、鶏肉や豚肉、牛肉などたんぱく質の多い食品を意識して摂るそうです。この間、好物のラーメンやジャンクフードなど脂っこいものは控え、試行錯誤しながら自分に合った減量方法を探しているとのこと。
また、階級制競技では、計量後の食事や栄養・水分補給も重要なポイントとなります。体重が十分に回復せずコンディションが低下したまま試合に出場することがないよう、角田選手の場合は、温かいスープで胃を温めてからスポーツ飲料など吸収の良い水分を摂取。そして、消化に良いバナナや雑炊、それからパスタや肉など、徐々に通常の食事に戻していき、ベストな体調へと調整するそうです。
また柔道の場合、計量は試合前日に行われるため、試合までに食事や水分を摂り、消化吸収をする時間は十分にあると考えられています。しかし、当日朝に無作為抽出された選手は再度計量を行い、階級の5%を超過してはならないというルールがあるため、計量後もこの再計量を意識した体重コントロールが求められます。
月経周期による体重変動と減量の進め方
女性アスリート特有の問題として、月経周期による体重変動について角田選手にお話しを伺ったところ、「生理前になると食欲が抑えられず、思うように減量ができない」と感じているそうです。
橋本からは、生理中(黄体期)は女性ホルモンの分泌が増加し、体内に水分が溜まりやすくなるため、一時的に体重が増加すること。また、アスリートは生理前に過食・食欲が亢進する割合が高いことなどを紹介した上で、生理中は体を温め血行を良くすると同時に、甘いものなども食べ過ぎない程度に取り入れることも、ストレスを和らげるために有効なのではないかと提案をさせていただきました。
体重階級制の競技における急速減量が試合に有利に働くかどうか、また、急速な減量を繰り返すことによるパフォーマンスへの影響については、まだ、一致した見解が得られていないのが現状です。但し、誤った危険な減量はパフォーマンスを低下させ、体調や健康を損なうだけでなく、命を落とす危険性もあるため、監督やコーチ、医師、トレーナー、栄養士等の専門家と共に、無理のない減量計画を立てて取り組むことが重要だと言うことを再認識するイベントとなりました。